尊敬した。


こんなふうになりたいと憧れた。


好きが大きくなって、きっとこの瞬間に、甘やかな恋が確かな愛情に変わった。


——この人と結婚したい。


何があっても大丈夫、とは思わなかったけど、この人とならきっと、何事も話し合い納得し合って折り合いがつけられると思った。


——私はこの人を尊敬している。愛している。


……そうか。


愛情は、尊敬が前提にあって初めて、こんなに確かなものになるのだ、と知った。


あいしてる。


私、伊波くんを愛している。


甘い響きを口内で転がすと、その都度まぶたに、伊波くんの柔らかな微笑みが浮かんで。


愛してる、というどこか大仰な言葉がしっくりハマる感覚に、興奮するというよりはむしろ、ひどく落ち着いていた。


すとんと腑に落ちて、とても心が穏やかだった。


その日、初めて伊波くんに、「好きだよ」じゃなくて「愛してる」と言った。


『う、ええ、え、……ど、どうしたんですか麻里! 嬉しいですけど!』

『私、伊波くんのこと愛してるんだなって思って』


ぼぼぼ、と顔を真っ赤にした伊波くんは、真っ赤なままへにゃりと笑って。


『僕も、麻里のこと、愛してますよ』


それは、私の誕生日を控えた、付き合って九ヶ月頃のことだった。