プロポーズは金曜日に

でも、無償の愛ではない自覚はある。


たとえばもし伊波くんから愛情が返ってこなかったら、私は伊波くんを好きでい続けられないだろう。


私が渡すのと同じくらいの分量じゃなくて構わないけど、全く私を大事にしてくれない人とは私は一緒に暮らせない。


夫婦が上手く生活していくのに、相手を尊重することは必要だと思うから。


私は私を大事にしたいのだ。

そのうえで、伊波くんを大事にしたいのだ。


伊波くんが好きだ。伊波くんを愛している。伊波くんを尊敬している。


伊波くんは私にとって、とても尊敬できる素敵な人だ。


結婚するなら伊波くんとがいいな、と思うのは、この尊敬できる人のためなら、きっと多くのことができるだろうと確信しているからだ。


長年一緒にいても、このまま対等な立場でやっていけるに違いないからだ。


伊波くんは決して怒らない。決して怒鳴ったり叱ったりしない。


『だって、一番分かってるでしょう?』


いつも微笑んで、変わらず目元をふわりと和らげたまま、そう言う。


『言い方は悪いですけど、失敗したことはもう終わってしまったことですから』

『終わったことを責めても結果が変わるわけではなくて、何も改善しませんし』

『それに、失敗してしまったのはその人が一番分かっていて、後悔していると思うんです』


どこまでも柔らかで、


『少なくとも麻里はそうでしょう? 次からは絶対間違えないようにしてるんですから、それでいいかなあ、と』


どこまでも緩やかな、


『大変でしたねえ。麻里に怪我がなくてよかった』


やさしいことば。