プロポーズは金曜日に

伊波くんは不必要にベタベタしない。干渉しない。


スキンシップがないということではなくて、普通にキスしたり抱きしめたりする。


でも、一緒に料理するけど、一緒にお風呂に入ったり、髪を乾かしてもらったりしたことはない。


私が読書をしている隣で、伊波くんは調べ物をしたりテレビを見たりするのは、私たちの当たり前だった。


当然のように、お互いがしていることの内容は知らない。


私は「読書するね」とは言うけど「今から推理モノ読むね」とは言わないし、伊波くんも聞かない。

「今度読もうかと思ってるんですけど、それ面白いですか?」とか「飲み物何かいりますか?」とかは聞くけど。


同様に、伊波くんが調べ物をしていても、私は「何について調べてるの? 何に使うの?」とは言わないし、伊波くんも「ちょっと調べ物を」としか言わない。


それで充分成り立っていて、何の不満もない。


だから、言わないし、聞かない。


それは別に、聞いても教えてもらえないということではなくて、聞かれたら教えるけど、でも聞かなくてもいいかな、ということだ。


私たちは、二人でいても、たまに一人の時間になるときがある。


一人の時間として使うときは、それこそプライバシーとして扱う。


付き合っているから、夫婦だからと言って、全部を合わせるのは難しい。


どちらかが一人の時間が欲しいときに、毎回片方が外出するのでは非効率だし、外出が無理なこともある。


二人でいても、今は一人の時間。プライベートにはお互い不干渉のこと。


そう言い出したのはどちらかなんてもうすっかり忘れてしまったけど、私かもしれないし、伊波くんだったかもしれない。


どちらにせよ、私たちの生活と上手く噛み合っていたのか、週に一、二回は一人の時間を作るくらいには、すんなり定着していた。