プロポーズは金曜日に

「それじゃあ、映画のチケットお願いします。いつもありがとね」

「いえいえ。また明日」

「うん、また明日。おやすみ」

「おやすみなさい。……あ、麻里」


電話を切ろうとしたところで呼びとめられる。


「ん?」

「帰り、クリーニング取りに行ってもいいですか」


……まるで、当然頷くだろうと確信しているような、単なる問いかけ。


落とされたそれの明確な淡白さに、また、ふわりと心が浮いた。


「いいよー」


伊波くん行きつけのクリーニング店は、伊波くん家までの道すがらにある。


距離は別段変わらないし、あまり手間もかからないので、全然気にならなかった。


きっと月曜日に着るものなんだろう。


だから当然週末に取りに行かなきゃいけないんだけど、私に確認を取ってくれたのが嬉しかった。


誘ったら私は当然一緒に行くと、自分に生活感を認めても何もマイナスにならないと思ってくれているのだ。


自然とクリーニングを取りに行くのに誘われるくらいには、私と伊波くんの関係は、現実味を帯びている。