プロポーズは金曜日に

「混んでるかなあ」

「混んでるでしょうねえ」


ふと思いついたことを呟いちゃっただけなんだけど、伊波くんはマイナスの意味に取ったらしい。


でも行きましょうね、ね、麻里、と慌てている。


もちろん行くよ、と噴き出せば、短い沈黙。


唇を歪めて目を泳がせるのは、照れたり恥ずかしがったりするときの伊波くんのくせだ。


見えないけど、若干赤く染まった目元を気にして、忙しなく瞬きしているに違いない。


むむむ、と口唇を開け閉めし、膨れたままで一度黙り込み、少し考えて。


しばらくして落ち着いたらしい伊波くんが、ゆっくり口を開いた。


「……お昼は中華食べませんか」


まだ若干照れが残る声での唐突な提案に、頰が緩む。


「この間行ったお店が美味しくて、麻里と行きたいなって思ってたんです」

「中華いいね、行こう行こう」

「はい。駅地下なんですけど、いいですか?」

「いいよ。じゃあ映画は駅に近い方で観ようね」

「はい。ちょっと待ってくださいね、今調べてるので……あ、十一時二十分からが一番早いみたいです」

「じゃあそれにしよう。一時半くらいに終わるとして、移動してご飯は二時からかな? 多分空き始める時間帯だからちょうどいいかな」

「そうですね、そのくらいだと思います。空いてるといいんですけど」

「待ってることになっても、いっぱいおしゃべりできるからいいよ。小籠包あるかなあ、小籠包食べたいな」

「あったと思いますよ」

「やったっ」


そんなふうにしてゆっくり予定を決めた。