シエナがあまりに真面目に困った様子をみせたことで、メイド頭は笑顔をみせた。


「お噂通りのお方ですね。
私は、御傍仕えの管理を任されております・・・浅野裕子と申します。
旦那様からあなた様の情報はいろいろといただいています。
誠実で、まっすぐで一生懸命。
ちょっとおっちょこちょいなとこもおありだそうですが、勤勉で何でもわかろうと努力される方ですね。」


「そ、そんなぁ・・・かいかぶりもいいとこです。
姉のデータと間違えてるんじゃ・・・ないですか。」


「いえいえ。いきなりすべてを学び取ろうとなさらなくていいのですよ。
学校と同じようにコツコツがんばってくださいね。」


「がっこう・・・って?」


「旦那様からお手紙を預かっておりますので、まずはこれをお読みください。」


「はい・・・えっと。」



シエナへ・・・

大学の方がいいと言われると時期的に近隣の大学では無理だったのですが、専門学校は2件、理学療法士と栄養士は別学校になるけれど、時間的にうまくずれている学校があったので、申し込んでおいた。

やる気があるならやってみるといい。
嫌なら、行かなくてもいい。
これは強制じゃないからね。

まずパンフレットや願書をよく読んでから決めるといい。
ただし、俺の奥さんの仕事を優先してがんばってほしい。
これは決してラッキーでは済まないぞ。

きっと生活的にはきびしいと思うが、若い君ならこのくらいの無理はできるはずだと信じている。
あとで、返事を待つ。








「なんか・・・果たし状みたい。」


「ぷっ!くくっ。
奥様は楽しい方だと旦那様からお聞きしていますが、ほんとに面白いですね。
邸の中が明るくなりそうです。
皆にお伝えしなくてはね。」


「いえ、そんなことお伝えしないでください。
ところで、旅行の準備って・・・」


「あ、肝心なことを言い忘れておりました。
用意はすでにできております。
玄関にまわって、部屋係の者から説明をお聞きください。
下着やドレスなど、用意したものの説明をいたします。」


「は、はい・・・。じゃ、玄関へいってみますね。」


何もしなくてももうハネムーンへいく準備なんてできてるんじゃないか・・・でも服のサイズとかいつ知ったのだろう?
そんな疑問が浮かんだが、司ほどやり手のお金持ちなら何でもありなのだろう。と楽観的にとらえたシエナだった。