昼前になって少し元気のない司がもどってきた。
釣りはうまくいかなかったらしい。


「すまん、今日はやはり竜巻の影響でいいのがとれなかったよ。」


「そうですか。あ、大丈夫です。
奥様と海で仲良くなったとかいう子どもたちからの差し入れの魚が届いてますから、それを料理しますから。
エビもありますしね。」


「なっ!うちの奥さんが子どもたちと・・・?」


司が部屋にもどると、日に焼けたシエナがソファでスヤスヤ眠っていた。


「こりゃ、いっぱい遊んだようだなぁ。
妙なことをせず、子どもたちと遊んでくれてたならよかった。」


「ん・・・あ・・・あっ、ごめんなさい。私眠っちゃって。」


「いいよ。君のおかげでお昼は腹ペコにならなくて済むみたいだ。」


「やっぱり釣れなかったの?」


「うん。小さいのしかね。かわいそうだから放してきたんだ。
シェフからきいたけど、地元の子と仲良くなったんだってな。
子どもたちから魚をもらったときいた。

夕飯はちょっとしたパーティーを開いて、地元の人たちに楽しんでもらおうかと思うんだが。」


「それはいいね。
とっても元気でいい子たちなの。
海もきれいだし、いっぱい泳いだのよ。」


「それはそれは・・・俺もそっちに参加した方が楽しかったのかもな。」


「そうね。お金があっても何でも思い通りにはならないわ。」


「嫌なこというね。
昼食だからそろそろ着替えてきてくれよ。」


「はいはい。」


司はシエナが自分はお金を与えられても自由にならないと言っているように思った。

(自分はお金で会社とセットで買われたと思ってるんだ・・・。)

司が昼食前に電話で漁師の家に電話をすると、電話に出た漁師のおかみさんらしき人はお礼をいってきた。


「いえいえ、うちの子たちが奥様を誘い出して岩場までいくなんて・・・なんて謝ったらいいのか。
申し訳ありません!!!
子どもたちは魚釣りやたくさん泳いで遊んでもらって大喜びなんですが、奥様はお疲れが出ておられませんか?
ケガしておられませんか?
なのに・・・パーティーまでお招きいただくなんて・・・夢のようです。ありがとうございます。」


「は、はぁ・・・いや・・・妻も楽しかったようなので、お気遣いなく。
はい。よろしくお願いします。」


(シエナが岩場にいってた・・・なんて。)