コツコツコツ、とフェニルの靴の音だけが石畳の回廊に響く。大陸のどこに位置しているのか、レイデンス王国からどれくらい離れているのか。そんなことはわからず、確かなのはこの場所が竜人の長の住む宮殿なのだ、ということのみ。
当然だがここにいる人間はフェニルしかなく、他は竜人。
十年前の事件が鮮明に蘇えってきた。母親を殺した奴らではないとわかっていても憎しみの感情があふれ出る。いっそ護身用に持ってきた細身の短剣で刺してしまおうかと何度となく考え、そのたび『無駄なことはするな』と己を戒めた。
(この……部屋かしら)
他の部屋とは明らかに違うとわかる豪華な扉。扉の端と端には兵士らしき男達が立っている、となればこの部屋に竜人の長がいるということだろう。
当然だがここにいる人間はフェニルしかなく、他は竜人。
十年前の事件が鮮明に蘇えってきた。母親を殺した奴らではないとわかっていても憎しみの感情があふれ出る。いっそ護身用に持ってきた細身の短剣で刺してしまおうかと何度となく考え、そのたび『無駄なことはするな』と己を戒めた。
(この……部屋かしら)
他の部屋とは明らかに違うとわかる豪華な扉。扉の端と端には兵士らしき男達が立っている、となればこの部屋に竜人の長がいるということだろう。

