『どんなことがあっても、ずっと覚えていて欲しいことがあるの。

 行動しなければ、何も良い方向には向かわない。だから後悔しないためにも、今できることをしなさい。だけど絶対に――――――――――――――――――――。』

 優しい声。だが最後の方はよく聞き取れない。いや……覚えていない。

 これは夢だとわかっていた。母親がフェニルに笑いかけてくれているから。いくら望もうともう見ることの叶わない笑顔が目の前にあるから。

 つうっと涙が頬を流れていく。

『フェニル、どうしたの?』

 心配そうな母親。これはフェニルが作り出した幻想に過ぎないと知っていても嗚咽が漏れそうだ。