君に刃を向けたら

「イオ、遅かったね
君の事だからまさかそんなことは無いと思うけど、手間取ったの?」


彼がイラついていた


「申し訳ありません」


謝ってみてもイラつきは収まらない


「何に対して謝ってるの?
手間取った事に対して?
それとも、」


「手間取ってしまった事に対してです」


彼の顔が強ばる

この瞬間を知っている

彼が彼じゃなくなる瞬間

奏の顔

私が好きな人の顔

だけどここで彼の名前を呼んではいけない


「手間取ってしまって申し訳ありませんでした」


そう言って頭を下げると奏から彼に変わる


「もういいよ
今日はゆっくり休んで

夏目、後はよろしく」


夏目、私の姉

唯一彼に名前を呼ばれる相手

私が羨んで仕方ない立ち位置の人間


私は、いつ死ねるんだろうか