神に選ばれし者でも人は人だ。












喉は乾くし腹も減る。












さすがに狐と同じ飯は食べられないから、そのへんの木に生えてる木の実や、川の水で暮らしていた。













だがそろそろ、私の独り立ちの日が近づいていたのだった。













「無名。」














「御影…。」













「お前はよくやった。今まででも類のない逸材に育った。独り立ちできる歳にもなった。これをお前に授ける。」













それは、狐の面だった。そして、桜の模様がはいった、黒い刀。そして、黒地に白の桜の模様が、はいった綺麗な着物だった。










「動乱の時代だ。これから起こることはお前でも手に負えない厄介なものかもしれん。だがお前にはいつでも私がついている。胸を張って生きるのじゃ。さらばだ。無名。」

















そうして、御影と私、無名の約10年間の暮らしが幕を閉じた。