「どうして言いたかったことを先にいっちゃうかな」
ため息と共に聞こえてきたのはそんな言葉。
一拍置いた後、似たようなブーケを差し出されて彼は笑う。
「結果の分かってるプロポーズなんて情けないけど」
「……それでも、いいよ」
「鏡味百合子さん、結婚してください」
私はそのブーケを受け取って、代わりに彼の手にプレゼントの紙袋を渡す。
「裕一くんと、同じ時間が過ごせますように。ありがとう、よろしくお願いします」
私が告げると同時に周りからは、わぁっと歓声が上がった。
まるでドラマの主人公にでもなったみたいだと思うワンシーン。
裕一くんは周りの声など気にならないのか、真っ直ぐに私を見つめる。
私の好きな、その笑顔で。
周囲も少し落ち着きを取り戻した頃に、ツリーの影から一組のカップルが歩いてきた。
その女性が臆することなく裕一くんに話しかける。
「上條裕一さんですよね?」
「そうですが、何か?」
余所行きの笑顔が女性に向けられ、私はしでかしたことの大きさを改めて思い知った。
こんな人通りの中でのプロポーズなんて。
タレント・上條裕一の名前には傷がついてしまうかも。
後悔はしないつもりだったのに、あっさりと頭をもたげる。
気が付けばスマホを向けてくる好奇の目。
「感動しました。これからも応援してます!」
「ありがとうございます」
想定外の言葉に私は面くらい、裕一くんは涼しい顔をしている。
そしてそのまま会釈して私の手を取り歩き出した。
彼につられて、わたしも足を動かすと、ふたりのために道が出来るみたいに人が避けていく。
中にはスマホを向けてくる人もいたけれど、多くの人が祝福の言葉を向けてくれた。



