気分だ、というわりにはしっかり染められている髪を見て、根は真面目なんだなと思う。
染めたあとはムラになってしまうからこまめに染め直さないといけない。
それなのに瑠生の髪がこんなに綺麗なオレンジなのは、瑠生がこまめにケアしている証拠で。
「なに笑ってんだよ!」
…素直じゃないな。
キラリ、ふと見えた瑠生の耳でピアスが光った。鈍く、けれど一生懸命に輝いて存在を主張する。
わたしもこれくらい一生懸命になれたら。
(なにかが、変わっていた?)
不意に浮かんだそんな考えを消すように、頭を振って笑顔を貼り付けた。
「で、由蘭が突き飛ばしたのが那智!」
「うあぁ、ほんとにごめんね!」
ほんとはあと二人いるんだけどね、と。
柚月が呟いたけれど必死に謝っているわたしの耳には届かなかった。
「それで」
再度那智はわたしと目を合わせ。
「由蘭はなんでここにいた?」
「、」
小さく首を傾げる。
「ほんとだよな。なんか倒れてっから声かけたら突き飛ばされるしよー」
意地悪に笑いながらからかう瑠生に反応もできなかった。
…なんて返したらいい?
普通に考えてこんな時間に繁華街にいる理由なんて、そうそうない。
逃げてきた?
そんなこと言ったって理解してくれない。
だからって正直に話すの?全部?
ダメ。初対面の彼らを巻き込むわけにはいかない。
じゃあ、なんて…。
「…い、家出したの」
苦し紛れの嘘を、無理やり吐き出す。

