部屋は下に比べて随分明るかった。


男はデスクに座るとお名前はと聞いてきた。

「渡辺美佐子です。」


と答えたが早く帰りたくて堪らなくなっていた。


初対面の人に巨大ウナギとか言う男を信用できる訳がないのだ。



「教授、もう少し落ち着いて下さい。教授は優秀なのにそういう態度で患者を逃すんです。」


いきなり地獄からの使者のような低い女の声がしたので私はびっくりしながら声の方を見た。


部屋の隅に白衣に眼鏡の女が立っていた。


細身だが決して美人ではなかった。

眼鏡を外すと突然美人になるパターンではなかった。

年齢は私と同じ位に見えたが何とも判断しかねた。


教授と呼ばれた巨大ウナギの男も三十代なのか四十代なのかさっぱり分からなかった。


イケメンではないが顔から無駄なパワーだけは溢れてるように感じる。

「美佐子ちゃん私ねこう見えてもコロンビア大学で性欲と日本文学の論文でネイチャーに載ったんだよ。

コロンビア大学って知ってる専攻は経済だったんだけど突然性欲に目覚めたのよ。先公が生意気だったからかな。

神の啓示だね。」


そういうと目の前で十字を切ってジーザスと大きな声で言った。


「あ!私の名前は高井安雄だよ。ふざけてるよね。高いのか安いのか分からないよね。

だけどうちは、安いよ。何時間でも五千円ぽっきり。

その辺りの風俗だとそう言われても信用出来ないけど僕は信用してね。

因みにこのデスクは姪が小学生の時に使ってたの。

何だかしっくり来るのよ。」