もうこの高校に入学して二年も経ったのだから、顔くらい知っていておかしくはないのに。

それもこんな目立つ顔立ちで。

噂にならないほうがおかしいのに。


「…わたし、知らないひとの物は借りないようにしてるの」


暗に怪しいから要らない、と言ったわたしに彼は表情を変えることなく。


「俺は知ってるよ」

「え」

「俺はヒカリのこと、知ってる」


ただそれだけを口にした。

そう。知らないはずのわたしの名前を。