荷造りをしていたら、どんどん悲しみな寂しさがこみ上げて来たけど、私は必死に泣くのを我慢した。自分から別れるのに、ここで泣いたら自分を悲劇のヒロインにして酔ってるみたいだ。そんなイタイ女には絶対なりたくない。

洋服をあらかた片付けたトコロで律人が帰って来た。

「おかえりー」

いつもと同じお出迎えも今日で最後。

「ん、ただいま」

律人も何か感じて少しぎこちない。

「夕飯、ハンバーグだよ。今から焼くから、先にお風呂はいってきちゃってよ」

律人のぎこちなさに気付かないフリで、いつもと同じようにパタパタとキッキンに向かう。


最後に、ううん最後だからこそ、楽しい食事をしたい。ずっと幸せな記憶になるように。
だから、いつも通り笑うって決めてる。


私は指で口角をニッと上げながらハンバーグを焼いて、楽しい食事の準備をした。