「でさ、こう言ったわけ」 ううん、と咳払いをして微笑んだ。 まぁ、彼はいつも笑った顔をしているから大して変化はないけど雰囲気で察した。 「いいんだよ、それより怪我は?」 綿貫くんの甘い声を真似しながら、私の手をとり首を傾げた。 な、なんてあざとい。 「え、手まで?」 「手まで」 「おぅ…なんて王子様」 「うっかり新しい扉開くかと思った」 真顔なのか笑顔なのか判別できない顔で冗談を言わないでほしい。 …冗談だよね?