梅を探すために顔をあげて、あたりを見渡すと、綿貫くんが私を見ていた。
なんだろう?
彼は一瞬だけ驚いた顔をして、にこりと綺麗に笑い視線を前にもどしてしまった。
これがフィクションで、綺麗な装丁が似合う漫画だったら恋に落ちてたのかもしれない。
しかし実際、そんな奇妙でファンタジーなスペクタクルは起きない。
よくわからないけど、取り繕ったな?
無表情に色が戻る瞬間なんて何度も拝めるはずがない。
それがあの綿貫君なら特に。
不信感をうんだだけの現実。
あぁ、無情。
でも、詮索をしたいわけじゃないし、親しいわけでもないから正直どうでもいい。
ただ、ちょっと疑問に思っただけ。
味覚で例えるなら苦味を伴う感情かも。
綿貫くんは、本当に甘いのかしら?