私は弱々しい声が出ただけましだと思う。
「出てきなさいよ」
震える声はそれを言うのも苦しいと感じた私をよく分かってる。
夢オチなんてあり得なかった。母に捨てられたのも、彼に絞められた首も、彼の憎しみの瞳も全て本当。
なんで、こんなにも諦められないものなのだろうか。
『妾を呼ぶのじゃ、姫』
突然、誰かの声がした。
その高い響きがとても温かく心地良い。
何か答えようとしたけど、また別の声がどこからか聞こえた。
『我が乙女、吾が輩の名前を』
それは低くてでも安心する声。
でも
「誰なの?」
呼べと言われても初対面なんですけど。
いや、姿が見えないから対面もしてないんだろうけどね。
『妾は___』
『吾が輩は___』
同時に答えようとした二つの声。
『どうしてそちがおるのじゃ?』
『それはこちらの台詞だ』
どうやら、お互いに予想外な存在だったらしい。私のことそっちのけで喋り始めた。
『そち、どうやってここに来たのじゃ?』
『貴様こそ、そのアホらしいそのつら下げて何しに来た、ニワトリがっ』
『ニワトリじゃとっ⁉』
『そうだ。三歩歩けばすぐに忘れるのではないか?』
『妾は鳳凰じゃ。ニワトリではあらぬっ。この犬っ』
『妖狼だ。目も悪いのか』
『ふんっ、馬鹿にしおって』
二つの声が喋るのを突然止めた。
『___時間があらぬな』
『その通りだ』
突然結託した二人に私は首をひねった。



