「___っ、なにこれ」

言葉を失った。

気がつくとそこは私の十七年が詰まった場所だった。

「私の部屋………」

どういうことだろう?

もしかして全部、長い長い夢だったの?

そういうことなの………?

気がついたら私は部屋を飛び出して隣の部屋にノックもせずに入っていた。

「母さんっ⁉」

だが、その声に反応する人は誰もいない。

まるであの日と同じ___。

「あっ」

そうだ。

あの日、母は珍しく優しくて私より早く起きていた。

「ここじゃない」

私は母の部屋を飛び出して、階段を下った。そのままキッチンに走る。

そしてそこには___


「母さんっ………!」


黒こげの物体と戦っている母の姿がそこにはあった。

母は顔を上げて私を真っ直ぐ見る。

その先の言葉を私は知っている。自然と全てを忘れて笑顔を浮かべた私。



「どなた?」

母の口でそういう誰かに私の笑顔がひきつった。


「えっ………?」


その瞬間、床が崩れて消えるのを感じた。




次に気がついたのは、間違えるはずもないあの山の奥地だった。

そのことに私は瞠目する。

案の定、母の背中が少し前に見えて泣きそうになる。



「___いい加減にして」



あの日の記憶をいいように使う何かに、私は低い声で言った。

その瞬間、また場が変わる。

しかしそこは私しかない無の空間だった。