その時彼に膝枕していてもらっていたことに気がついた私は飛び上がった。
彼となんとも言えず顔を見合わせて、私は苦笑いを浮かべた。
「ねぇ、ここ森の中?」
「そうです、………大丈夫ですか?」
そう感情の見えない声が聞くので、一瞬首絞めといて言う台詞かと言いたくなった。
「___ちょっと突然準備もなくだったから戸惑っただけだから、大丈夫。独りじゃないしね」
「本当は何があったんですか?」
「まあ、いいでしょ。で、なんでここに連れてきたの?」
彼の質問には答えたくなかった。
母とは元々不仲で捨てられたとしか言わなかった私。
それは言葉は足りないけど本当だった。
だから、これ以上話す義理もない。
「………自分の影を見つけて下さい。もう一人の貴女を」
「えっ? 本当に言ってるの?」
「そう言うと思いました。わたくしの影をご紹介しましょう」
そう言った彼の影が一瞬伸びて、縮み始めた。だんだん浮き出て見えてくるとその形は猫___否、黒豹。
それは静かに彼の隣に立って私を見つめた。
「彼女がわたくしの影です」
「女の子なんだ………」
他にコメントのしようがなかった。
彼が無言でうなずいた。私は自分の足下にのびている普通にしか思えない影を見る。
「これが私の影の中にもいるの?」
彼が首を振って言った。
「これから探すんですよ」
その瞬間、時を告げる二つの太陽は重なった。



