その後、花の話で盛り上がっていた私たちをケイが迎えに来た。
「お二人とももう日が沈みました。今日はそれくらいにしてお休みになられてください。お風邪を召しますよ」
ため息まじりのその言葉に、私は顔をしかめたが王子は違った。
「ごっごめんなさい」
「いえ、親睦を深めることは良いことです」
相変わらずな読めない声。
「では、中にとりあえず入りましょう」
「まっ待って!」
王子は今日一番の大きな声でそう呼び止めた。
「なんでしょう?」
ケイがそう振り返らずに問う。私はケイの後に続こうとしていた足を止めて振り返る。
気のせいだろうか。ケイのその言葉が嫌に冷たい。
「レヴィア?」
普通に敬語なしで喋る仲になっていた私たち。
そう王子が呼ぶのもなんの違和感もなく、
「なに?」
「えっと………明日も会える?」
その言葉が思った以上に嬉しく思っている自分。
初めての友達は彼にとってだけじゃない。
「あー、えっとケイ? 会ってもいいよね? 婚約者なんだし」
一応、ケイに聞いてみたのはただの気まぐれだったように思う。
振り返らない背中が言った。
「さすが、非女の娘ですね。___いいですよ、お好きにして下さい」
そう言わないように努力すると言った言葉を彼は私に投げかけたのだ。



