「………レヴィア様、お言葉が過ぎます」
驚きから立ち直っていたケイは彼女を無表情にその瞳に捕らえて言った。
正直、こんなにケイが苦戦を強いられているところを見る日がくるとは思わなかった。
彼は僕がその存在を知った時には、完璧な国王陛下の側近になっていて、その仕事で失敗したというのは一度として聞いたことがなかったから。
しかし、シュティ・レヴィアを前にそれが崩れる。
「なによ? “貴女は正直に話していただくだけで結構です”って言ったのはケイでしょう?」
「人を傷つけていいと言ったつもりはありませんが」
その言葉に彼女が明らかにひるんだ。
「………別に。本当のこと言っただけ」
彼女が苦虫を噛んだような顔で、言い訳するように呟く。
さっきの言葉を思い出した。
正直どんな気持ちで彼女が“おすまし人形”と言ったのかさっぱり分からなかった。だが、いい意味では絶対ないと思う。
さっそく僕は彼女に嫌われてしまったのだ。
結局、そういうことなんだ………。
やっぱり僕の毎日はいつもと何も変わらないや___。
「本当だろうと言ってはいけないことがあります。お分かりになりますよね?」
そんな僕をよそに、ひるむ彼女に追い討ちをかけるケイ。
「………そんなの知らないわよ」
そう答えて、彼女はうつむいて僕の方へ歩きはじめた。
なんだろう?
そうボーッと考えていると僕の腕が引かれた。
「一緒に来て」
「えっ?」
有無を言わせず、彼女は僕を引きずるようにドアへと歩く。
振りほどくことも、ついていくこともしない僕。
「レヴィア様っ、お待ちを」
初めて聞く焦ったケイの声。
それを聞きつつ、ぼんやりと思った。
今日がいつもと同じなんてことはきっとない。
むしろ、初めてなことばかりで僕は腕を引かれながら途方に暮れた。
なんて日なんだ………。



