緋女 ~前編~



今までのショウを見ているからか、なんだか素直に言えなかった。

本当はこんなことが言いたかったわけじゃない。


思ったのは、なんでもいいから元気でいて欲しいってことで。

似合うとか似合わないとかじゃなくて、元気だしてって言いたかった。


「………僕に似合うってなに?」

静かにショウは私に問う。

その台詞はまるで私を責めているようだが、私は責められているような気はしなかった。



でも、こんなときはなんて言ってあげればいいんだろう?

王子の時とは違う。

王子は素直だったから、私の言葉も受け入れてくれたけど、ショウはそんな一筋縄ではいかない。



今の私にショウに届く言葉はない。



ならば、もう諦めよう。
そうだ。

諦めて、今日ショウに出会って感じたことを言葉にしよう。


「………なんかごめん。そう、ね。うまく言えないんだけど。えっと、少し私の話もしていい?」

「どうぞ?」



「私ね、学校が___嫌いなの」



「へー。でも、レヴィは知らないんじゃない?」

ショウは私が決心して喋りだしたのをいきなり遮った。



「ここは唯一の国公立学校だよ?この学校に入った瞬間、将来は約束されたも同然なんだ。しかも入ってくる人は金持ちがほとんど。………でも、貧しくても入りたい奴はたくさんいる」

乱雑に吐き出される言葉に見え隠れする感情。



「学校嫌いとか、贅沢すぎるんじゃない?」


そう言うショウの瞳は漆黒の闇。
それを覗いたら最後、のみ込まれてしまう。


だから私は目を伏せて言った。



「うん、___そうかもしれない。でも、それでもね、私は学校が嫌い」

その言葉にショウの方眉がつりあがる。でも、今度は私を遮ることはしなかった。



そこまで言うならと、多少は聞く気になったのかもしれない。



「でもね、今日ショウのおかげで、考えが少しだけ変わったの」