緋女 ~前編~





「何言ってるの、頭おかしいんじゃない?みたいな顔しないでよー」

「違うの?」

私の冷たい目線にショウは嬉しそうに笑う。


「あー、僕がただ遊びに来たって思ってる?」


「実際そうでしょ。ていうか、………女装趣味なの?」




「趣味?いや、特技だよ」


そう言った矢先、なにやらショウがぼやけ始めた。


「なっショウ?大丈夫?」

慌てて駆け寄るが、またショウの形が作られていく。

足は内股じゃないし、髪は元の長さに戻ってシュシュが床に落ちた。

漆黒の瞳こそ変わらないが大きな瞳は元のたれ目に戻っている。



「はい、ショウ君の出来上がりー」

「それ、魔法?」


こんな魔法あったら犯罪なんて簡単。




「まあね。でも、___もう僕しかできないよ」




「えっ」

私のたくさんの疑問をひとつ表したそれにショウは、私のベットに腰かけた。微笑んで隣をぽんぽんとたたく彼は、きっとそこに私も座れと言ってるんだろう。

「………」

仕方なしに座るもさっきまでの雰囲気の違いに戸惑っていた。


“もう僕しかできない”


うつむくとお互いスカートがよく見える。


「聞かないの?」

「何を聞けばいいの?」

「それもそうだね」


こんなに静かなショウはショウじゃない。

王座がどうのって言ってた時とも違う。



ただ、静かな燻るような感情を私は感じた。



「僕の話聞いてよ」