緋女 ~前編~



意識が浮上した時、辺りは暗かった。

夜かと思って、それから首を横に振った。ここは地下だ。

しかも、閉鎖的な何もないレン先生の教室は窓もない。あるのはどこから射し込んでいるのか分からない、明かりだけ。

時間は分からない。


仕方なしに起き上がろうとすると、和らいでいたはずの頭痛が少しした。

でもまあ、さっきよりはましだ。

目をこすりつつ、目を開けると肩を震わせてこちらを見る人影が目に入る。



「……なに笑ってんの」

ばつが悪いので、なんとなくそう言ってしまった。だけど、私の始めに言う言葉はそれじゃない。

私は強いどころか、戦わないうちになぜか倒れてしまった病弱な奴だ。

そんなこと、一度もなかったのに。


「すみません。迷惑をおかけしました」


素直にそう謝ると、この空間にこらえきれないとでも言うように笑いが溢れた。


「確かにこれは………そうだね。だからか」

ショウが笑いながら何度も頷く。

私は何も面白くない。
レン先生まで笑ってるし。

「だからって?」




「レヴィはもしかして本当に自分がヒメリアだと思ってる?」



答えにつまった。


そんなことは思ってない。本当の私は名無し。


シュティ・レヴィアも誰かから借りた名前。

ヒメリアはケイがシュティ・レヴィアに送った名前。



私の名前はあちらの世界に置いてきた。


「私は__」


答えのない答え。

いつだったかもそんなことあった。

ケイが私をシュティ・レヴィアだと言い張った時だ。あのとき、確かケイが怒って……。


怒って__?