緋女 ~前編~




その人を知っている、直感でそう思った。


だけど、誰か分からない。



こんな外国人みたいな名前だし、知人に外国人なんていなかった。



「レヴィ?どうしたのー」



ショウの間延びしたその声に私は我にかえる。


「いや、なんでもない。その人も赤い瞳?」


知っているように思ったのは、昔読んだ本の主人公の名前かなんかだろうと結論づけて、私はそう聞いた。


きっと、こちらではこういう瞳の人も少なくないのだろう。


ん、でも誰かこの瞳こそシュティ・レヴィアの証だって言ってなかった?

髪だっけ。いや、両方?

その時また誰のものか分からない台詞が浮かんだ。



”貴女の髪の色、白銀に一筋の金。その髪が貴女がシュティ・レヴィアであることを証明してる。間違いなく貴女は非女の娘だ“


そうだ。髪。

___っ、気のせいかとも思っていたけど、何か思い出そうとすると頭がひどく痛い。


まるで思い出すのを拒否するような痛み。


「何言ってるの?当然じゃん。レヴィの母親だって曲がりなりとも同じ血が流れてるんだから」

お願いだから、それ以上何か言わないで。

頭がおかしくなりそう。

「あっ、そうだ。レヴィ、そのかつらもどうせならとっちゃいなよ」

それにすっかり抜け落ちていたけど、ケイは髪も瞳も隠すように言っていた。

ケイとの約束。

別に絶対じゃない。隠すにも今さらだ。



けど、裏切れない。裏切りたくない。



「……嫌よ」

「なんで?別にいいじゃん。ほら」


ショウはいつのまにか立ち上がっていて私の頭に触れようとした。



なんでって?

ショウがそう聞くけれど、それは私が聞きたい。

しかし、その疑問の答えさえ痛みに変わる。




私は混乱の最中気を失った。