緋女 ~前編~



「……ふーん。まあ、いいや。でも僕が君をシュティ・レヴィアだと勘違いしている理由、知りたくないのー?」

私をシュティ・レヴィアに決まっていると思っているこの少年に、思わずため息が出る。

「私とシュティ・レヴィアってそんなに似てる?」

だから、ケイとか王様とか、ライサーとか勘違いしてんのかな。

今のところそれはありがたいから、いいんだけど。


「へー、本気でとぼけるつもりなんだ?」

「いや、これは本心。私はシュティ・レヴィアじゃない」


だがヒメリアでもない。

なんとなく少年と睨みあっていると、先に少年の方が視線を外した。


「まあ、いいや」

「そればっかりね」

口癖なんだろうか?

だとしたら、ちょっと__。


「__そうだね。じゃ、一緒に来て」

「えっ、一緒に教室入ってくれるの?それ、助かる。ありがとう」

その私の言葉に再び少年がこちらを睨むように見てきた。


「気持ち悪いね」
 

少年のその一言に私は思う。

やはり学校は嫌いだ。

少し答えを間違っただけで、嫌な奴のレッテルを張られる。この世界の学校も所詮はそういう所なんだ。


「……あっそ」


それでもこの世界に来てしばらく言われてなかったこの言葉が、私の胸に刺さることはなかった。

十年近くもそういう学校にいたんだ。

たかが半月で耐性がなくなるわけがない。


それを言われて本気で傷つくのは相手が母だった時だけ。


「ふーん、ねえレヴィ?」

「ヒメリアよ」



「うん。さっきの“一緒に来て”って、これから授業サボんないかっていうお誘いだったんだけど、どうレヴィ?」



思いがけないそれに私は戸惑った。