浅葱色の妖


「土方さん、いますか?」



襖の外から声をかけると、「入れ」と短い返事が返ってきた。



中に入ると、土方さんは机に向かって何やら書き物をしていた。



「手拭いと着物はその辺に置いておけ」



彼は振り返りもせずに言う。



「あの、私はどこで寝ればいいんですか?」



「ここだ」



「……え?」



「ここだ」



「……」



ここって、ここ?



土方さんの部屋?



ああ、この部屋で私は寝て、土方さんは他の部屋で寝るということか。



「私はもう寝るので、他の部屋に行ってもらえますか?」



「何言ってんだお前。何で俺がここから出て行かなきゃならないんだ」



「え?だって、私が寝る部屋はここですよね?」



「そうだ」



「土方さんが寝る部屋は他の部屋ですよね?」



「ここだ」



「……同じ部屋で寝るってことですか?」



「そうだ」



「ええええっ!?」



この一連の会話で土方さんがこちらを振り返ることは一度もなかった。



そんな冷静になんてこと言ってくれちゃってんの!?



「ななな、なんで私が…」



「何でって、俺がお前を世話するからだろ」



「いや、だからって一緒に寝ることないでしょう!」



ここにはたくさんの部屋があったはず。



全部の部屋が使われているなんてあり得ない。



さっき屯所を『散歩』していた時に色々な部屋を回ったけど、使われていないような部屋もあった。