なぜその人がここにいるのか分からない。


 きっと、自分を追ってきたのだろうか。


「何で、ここに——————?」



 視線が泳ぐ。何を言われるのかわからなくて怖くて、悪い顔色がさらに悪くなる。



 だけどそこで立ち聞きをしていた人はそんなことは気にせずに、ただ無表情。



「ねえ」


 凛と、その声が響く。


「取引しない?」


 ニヤリと、そう言って笑った。