『もしもし?』

彼女の声がすぐに聞けるデジタル時代でよかったと思う反面、やっぱり直接会いたいという気持ちが増してしまう。

「もしもし、あい?仕事早く終わったからこれから帰る。それで・・・クリスマスプレゼントは何が欲しい?俺、そういうのよくわからなくて」

彼女は何て答えるだろうか。
何であれ、俺が与えられるものなら何でも与えたい。
青い時計でも、白いイチゴ飴でも。


耳元で声がするというのは格別に心地好いものだけど、顔が見えないのはひどく寂しい。

「あい?」

聞こえていないのかと呼び掛けると、

『あ、ごめん。ちょっと考えてて・・・』

と慌てた声が返ってきた。

確かにクリスマスは迫っているが、今の今すぐに返事を迫るつもりはなかった。
「考えておいて」と言葉を発する前に『・・・砂時計』と電話がそっと震えた。

「砂時計?」

幼かったあいの泣き顔が浮かぶ。
あの時、俺は諦めさせるべきだったのだろうか、とその後もずっと思っていた。
崩れると知っていたのに、結局彼女を泣かせてしまった。

今でも俺は泣かせてばかりいる。
拭っても拭ってもポロポロ落ちる雫を見ると心が痛い。

「わかった。ごめん。やっぱり帰るの遅くなるから、週末に」

『うん、大丈夫。気を付けてね』