兄の結婚というビッグニュースのおかげで話題は尽きなかった。
社会人である兄もそつなく会話に加わる中、やはり私だけが〈子ども〉の枠に取り残されている。

それも一時だけの我慢だと、ちびちびウーロン茶を飲んでいたら、急におばさんが声のトーンを落とした。

「こんなおめでたいときに持ち出す話題じゃないと思うんだけどね、春之が離婚したのは知ってた?」

コップを落とさなかったのは、小さいけれど奇跡だったと思う。
あの瞬間私は耳以外のすべての感覚を失っていた。

「え!?知らない、聞いてない!いつのこと?」

私の思いはそっくり母が代弁してくれた。

「私もついこの前聞いたんだけど、もう2年くらい前に離婚してたらしいの。そういえばその辺りから紗英さんも来なくなってたのよね」

「あらー、またどうして?」

「それがはっきりしないんだけど、別に浮気とか借金とかそういうどちらかに原因があるわけじゃないみたい。性格の不一致かしら?」

「二人とも穏やかそうなのにねー。子どもができなかったことも理由かもね」

「6年?7年?それだけ一緒にいればいろいろあるかもしれないわね」