一ヶ月弱の夏休みのうち、最初の10日間と最後の10日間は学校の講習がある。
お盆はさすがに休みだけど、若村君は塾だった。

だから後期の講習が始まる前日の日曜日、私たちはようやく二人で出かけることができた。


高校生である私たちにそんなにたくさんの選択肢はない。
結局電車で30分かけて、幼少期から事あるごとに行った馴染みの水族館に行くことにした。


ノースリーブのワンピースで来てしまったことを後悔するほど、その日は朝から容赦なく晴れた。

電車が大きく揺れるたび、私の腕に若村君のTシャツの袖が当たってくすぐったい。
同じ市内なのに、いつもの行動範囲から出るワクワク感がそのくすぐったさを際だたせるようだった。

民家と民家の間から時々見える海。
空もとても濃い青をしているのに、それとはまた違う深い青。

もう少し海をちゃんと見たいな、ともどかしく思う頃に電車は水族館の最寄り駅に着いた。