ノートに向かう若村君を幸せな気持ちで見ていたら、「あ!」と言って顔を上げるから真正面で目が合った。

「うわ!びっくりした!なに?」

「やっぱり出席番号順でもいいかも」

「・・・なにが?」

「結婚」

さっきの恋愛を省く、という話らしい。
妙ににこにことそんなことを言うので、ちょっとクラス名簿を思い浮かべてみた。

━━━━━あ!順番通りだとしたら・・・

「俺と藤嶋さんだよ」

なんて乙女な発想するんだろう!
嬉しそうに笑う若村君が平気そうだから、私の方が赤くなってしまう。

「早いよ!」

「わかってる。まずは大学に合格しないとね」


『まずは』という小さな言葉が気になってしまう。
大学に合格して、卒業して、就職して・・・その先にも私と若村君の未来はつながっているのだろうか。

未来を見るように顔を上げると、濃いコントラストの空が見えた。

窓が全開になっていたと気付かなかったほどの無風。
暑さで常にぼんやりした頭では、明日のことも想像できなかった。