思い出の中に春之を探して、恋のかけらを集めても集めてもそれは恋にはならず、砂の中から役に立たないガラス片を集めるようなものだった。
子どもの私にとってそのガラス片は宝石以上のものだったが、大人からすればイミテーションにすらなれないまがい物だっただろう。

もちろん、大人である春之にとっても。

だけど大人になってみて思う。
どんなに高価な宝石でも、子どもの頃集めたガラス片以上に私をときめかせるものはない。

あのとき、私にとって確かにあれは宝石で、確かにあれは恋だった。


私が大人だったら・・・

同じ大学だったら・・・

犬や小鳥だったら・・・

春之のいない世界だったら・・・

私の恋は私のすべてを否定し続ける。
私の恋は私を幸せにはしない。
実態の定かでないものとの闘いは、私を疲弊させていた。


そして私は月に祈るのをやめた。


私は春之じゃない人に心から恋をし、その人に恋をされてみたい。