まだまだ消えない夏の夕暮れの光と、古くて弱々しい提灯の灯り。
その中にいてちょっと現実離れした頭で、唐突に私は理解した。
━━━━━私は、春之が好きなんだ。
クラスの男の子を好きだとか、テレビで見るアイドルが格好いいとか、学校の友達の真似をして騒いだものとは全然違う。
物語の中にあって憧れた恋みたいに全然きれいじゃない。
私の恋はもっと生々しくて暴力的で悲しいものだ。
春之の結婚式で感じた衝撃や紗英さんに対する歪んだ憧れの理由が、カシャンカシャンとひとつの形につながっていった。
見事なまでの絶望の形。
今更それがわかって、私に何ができるのだろう。
春之に手を引かれて、屋台で賑わう人をかき分けながら本殿へと歩く。
「5円・・・はないな。10円も1枚しかないから、あいちゃんは100円ね」
お金のことなんて何も考えずに来てしまったけど、春之は当然のように私の分のお賽銭まで用意してくれた。
春之は自分の分の10円玉を投げ入れて手を合わせている。
だから私も、私にとっては大金である100円を投げ入れて同じように手を合わせた。
願い事なんてひとつも思い浮かばない。
その時の私は驚くほどに空っぽだった。
私の世界は360度春之しかいなかった。
━━━━━神様、私は春之が好きです。春之が好きなんです。
ただただ、それを繰り返して顔を上げた。



