子どもにとって冠婚葬祭は退屈なものだ。
兄はもう高校3年生だったけれど、それでも飽きて会場を出たり入ったりうろうろ落ち着きなく動いていた。
しかし大人にとっては食事や写真撮影、挨拶など忙しく立ち回らなければならないらしく、元々手の掛からない子どもだった私などすっかり放置されていた。
お子さまランチのような食事でお腹はいっぱいで、あとは母の食事についていた大きなエビの殻を弄ぶくらいしかできることもない。
エビのひげを引っ張りながら遥か遠くにいる春之を見る。
次々と挨拶に訪れる人に頭を下げ、注がれたお酒に口をつけているせいか、珍しく顔が少し赤い。
そんな春之の隣で紗英さんも笑顔で挨拶をしたり、春之の耳元に口を寄せて何か話しかけたりしている。
いつの間にかテーブルの上には抜けたエビのひげが散らばっていた。
楽しくないのは親や兄にほっとかれているからじゃない。
その原因は春之にある。
私がどんなに退屈していても、今日は春之は来てくれないのだ。
それがとてもつまらない。
とても悲しい。



