あっさりと入ってきた春之と違って、その真っ白な〈おひめさま〉は荘厳な音楽と光に包まれながら姿を見せた。
男性と腕を組みゆっくりゆっくりと春之に向かって歩いてくる。
春之はその様子をおだやかな表情で見守っていた。
そこにどんな気持ちがこめられているのか、私が幼いせいなのかわからない。
初めて見る紗英さんは、目を伏せたままでちゃんと顔は見えない。
それでも凛とした雰囲気に圧倒された。
拍手をするのも忘れて、私はその異常事態の主を見つめた。
もっと近くで見たかったけれど、目の前に来たときには紗英さんの隣を歩くおじさんが邪魔で見えなくなってしまった。
春之に手を引かれ、紗英さんはいとも簡単にいつもの私の場所、春之の隣に並んだ。
誓いの言葉を述べ、指輪の交換が行われていく。
真っ白な二人を呆然と見ながら、母に『白は〈およめさん〉しか着ちゃダメなの』と言われたことを思い出していた。
真っ白で上品な紗英さんに対して、私は安っぽいピンクを着ている。
そのことがどうしようもなく恥ずかしく悲しくなっていた。
白いドレスだったら、私も紗英さんみたいに、紗英さん以上にきれいになれただろうか。
春之の隣に立てただろうか。
ドレスの色の問題ではないことなど、小学3年生ともなればわかっていたけれど、それでもそれしか春之に近づく術が思い浮かばなかった。



