春之の結婚式の日は、見事なまでによく晴れた。


紅葉は終わったがまだ雪は降らない11月最初の土曜日。
予報は曇りで、ギリギリ雨だけは降らないで欲しい、というみんなの願いを笑って突き返すような快晴だった。

私は例のピンクの花柄のドレスを着せられ、顎のラインで切り揃えられたボブをその日だけはふわふわに巻かれた。
安っぽいビジュー付きヘアアクセサリーまでつけられる。
昔憧れた〈おひめさま〉の簡易劣化版。
明るい空の下ではますます惨めで気持ちが沈んだ。


披露宴はホテルの宴会場で行われるが、結婚式は隣接したチャペルでするらしい。
ホテルの人に示されるまま、薄着のドレスで「寒い寒い」と縮こまって着いたチャペルの入り口は、豪華な階段の上にあった。

絵本で見たそのままの真っ白な大理石。
曲線的な白い手すりにはピンクや白のバラが飾られていて、本当にガラスの靴が落ちていそうな夢の階段だった。

「最後に新郎新婦がこの階段を降りてくるのね。今日は晴れて本当によかったわねー。雨なんか降ったら外だし最悪よ」

母が父にそう言って父も黙ってうなずいている。

新郎新婦が誰と誰を指すのかまったく思い至らず、おうじさまとおひめさまが降りてくる姿をぼんやりと想像しながら「ほえー」とその階段を見上げた。