「貴也!」


後ろから声がして振り返ると、灯理が立っていた。



「灯理」

と、走って俺に体当たりしてきた。





「ぐえっ?!」


「…………ック,…………うっ……」



灯理は、泣いていた。

俺と同じくらいの背のクセに、背中に腕を回して、今まで見た中で一番、泣いていた。



そして小さく、本当に聞こえないくらい小さく、確かに言った。



「本当に、ありがとう」


って。





しばらくしてパッ、と俺から離れて。


「ばーかっ!ばーかっ!」

と顔を真っ赤にして走って逃げていった。



きっと、あいつなりの感謝だと思う。






「………ははっ!なんだそれ!」


おかしくて、つい笑ってしまった。