「幹歩くんをこれ以上悪者にさせないように。

悲しい思いをさせないように。


貴也は、本当のことを言えなかった。」


「はあ………?俺はそんなこと……」


俺は寝ていた体を起こした。

結灯は寝転がったまま、俺を見上げる。


「だってそうでしょう?

ちゃんと順を追って説明すれば、
幹歩くんの言ったことは嘘だって、
簡単に証明できる。


なぜ幹歩くんを突き飛ばしたか。

二人で帰るときに何を話したか。

美津ちゃんと付き合うことを決めたとき、
幹歩くんが何を言ったか」

「………そんなの言ったって……」


結灯はふふ、と笑って、体を起こした。


「貴也が優しいと思っていた部員たちは
優しいからこそ、仲間を信じたくて幹歩くんの言葉を信じてしまった。

……………優しさを、逆手にとられたんだよ」


ドクン



また、心臓が締め付けられる感覚。



「そんなに優しい部員たちなら、貴也がきちんと説明すれば、聞いてくれないはずがないでしょ?」

「……………」