あたしが公園のほうへと近づいていくと「カナさん」という声と共に道が開けられる。



初めての暴走のときは当たり前だけど、あたしの名前なんて誰一人として知らなかった。



あたしも怖くて一人でこの集団の中に入る事なんて出来なかったよな。



「お久しぶりっす」


「今日一緒に走るんすか？」



沢山の声があたしに向けられる中、あたしはその声一つ一つに丁寧に答えた。



あたしが存在していると教えてくれるこの場所。



「カナさん」と名前を呼ばれるたびにあたしはここにいるんだと実感できるんだ。



きっとどれだけの時間があっても足りないくらい盛り上がっている中、急にみんな顔つきが変わる。



背筋を伸ばし立ち上がり、みんなの見つめる先を辿ると……



そこにいたのは



三代目総長、豊。



ヘブンのトップ、豊の姿だった。



「豊!!」



あたしは特攻服を身に纏い、沢山の視線を向けられている豊が急に愛おしくなった。



カッコいいとか好きだととかそんな感情じゃない。



あたしの全身が豊を求めていた。



この男があたしの彼氏だと思うだけで鳥肌が立ってしまうくらいに……