「服だよ!!服!!新年の挨拶に行くのにジャージはなくねぇか?」



そう、あたしは豊に担がれて家を出てきたため、ゴロゴロするのに楽なジャージを着ている。



「別にいい」



「良くないだろ?!」



「誰もお前の服装なんか気にしねぇよ」



「あたしが気にするんだよ!!」



これは譲れないと思い、あたしは豊にくい付いていく。



「時間がないから無理だ」



「で、でも……」



「遅刻するほうが失礼だろ?」



「確かにそうです」



完敗。



いつだって豊には勝てやしない。



そうこうしているうちに、車は豊の実家へと到着していた。



あたしは豊の後ろを歩きながらもジャージが気になって仕方ない。



「ただいま」



豊が玄関でそう叫ぶと、エプロン姿のお母さんが顔を出す。



「来てくれたのね。さぁ、入って」



相変わらず、優しい表情のお母さん。



「おめでとうございます。こんな格好ですみません」



あたしはお母さんに頭を下げた。



「何言ってるの。そんなこと気にしないわよ。お父さんだってパジャマなんだから。ほら、寒いから行きましょう」



本当に文句の付け所がないお母さん。



あたしは久しぶりに豊の実家に足を踏み入れた。