「着いたぞ」
「起きてるよ」
人間はお腹がすいているときと、眠たいときはイライラする。
教室に行って寝るしかないな。
あたしはいつもより重く感じる車のドアを開け校舎へと向かった。
「はよっ!!」
「豊先輩素敵!!」
相変わらず、校内のどこを歩いても声をかけられる豊。
男まで声をかけたくなるほどカッコいいとは思わないけどな……
「どこ行くんだよ」
「あっ?」
あたしは靴を履き替え、教室の方向へ足を進めようとすると、後ろから豊に腕をつかまれた。
「そっちじゃねぇだろ?」
今日のあたしは機嫌が悪いんだ。
突っかかってくるなよ。
「あたしの教室はこっちだよ」
「教室行くのか?」
コイツは何のために学校に来てるんだよ。
教室に行かないなら、まだ家で寝てたってよかったのに。
……って言っても、あたしだって勉強しに教室へ行くわけじゃないんだけどさ。
「教室行くけど」
豊の手を振りほどきながら、そう言うと豊は「屋上に来い」と言いながら、再びあたしの腕を掴んできた。
「やだ」
「なにが嫌なんだよ?いつも行ってるだろ?」
確かにいつも行ってるな……
教室でじっとしていたって暇なだけだから。
でも、今日は違う。
なにがなんでも寝たいんだ。
「屋上は寒いだろ?!そこで寝たら風邪引くだろうが!!」
あたしはきちんと正当な理由を述べたのに、コイツはあたしの話を聞いているのだろうか?
何も言わずに腕を掴まれ屋上へ続く階段を引っ張られている。
あたしの安眠が……