「寒いからこれ着とけ」 ジャージの上に羽織っていたスカジャンをあたしの肩にかけてくれる豊。 「豊は?」 「俺は寒くねぇ」 袖を通したスカジャンからは豊の匂いがする。 いつも豊の髪の毛が靡くたびにする匂い。 「豊、香水つけてる?」 「あぁ」 「いい匂い」 「しっかり捕まってろ」 走り出したバイクの後ろは翔と違って乗りやすい。 しっかりとしがみ付いていなくても、振り落とされることはなさそうだし…… でも、うるさすぎる音にに耳が痛い。