「じゃから、その真意が読めぬのが問題じゃと言うておるんじゃよ。さっきから」


「手がかりを残さなかったのは、『探すな』という意思表示なのではないでしょうか?」


 そうなのかもしれない。


 水園さんも手鏡のメッセージで、『自分たちを探さないでほしい』と言ってるわけだし、それは考えられるけど。


「少なくとも、表沙汰にしたくはなかろうな。門川当主が女人と一緒に姿を消したなどということは」


 小浮気の人たちが、真っ青な顔をヒクヒクと歪ませて怯えている。いまにも吐きそうだ。


 よりによって、門川君の身を守らなきゃならない一族の長の娘が、門川君と一緒に姿を消した。


 これがバレたら一族断絶は免れない。それどころかヘタすりゃ全員、赤ちゃんまで処刑されちゃうかも。


 それっくらい残酷なことが平気で通っちゃうのが、こっちの世界の異常なとこなんだから。


「それが分かっているのに、永久様はどうして姿を消してしまったんでしょう?」


 凍雨くんが、心配そうな顔で小浮気一族の人たちを見ている。


 氷血一族は、門川君のお母さんと鬼ババの奥方の因縁のせいで、ずっと散々な目に遭わされてきた。


 彼にとっては他人事に思えないんだろう。


 凍雨くんとお岩さんが、へたり込んでしまっている小浮気の人たちのそばにしゃがみ込んで、優しい口調で話しかける。


「きっと、予想外の『何か』が起こったのですわ。宝物庫の検分中に、変わった出来事はありませんでしたの?」


「……いえ。検分係は皆、口をそろえて『作業に問題はなかった』と言っております」


「キミたち、ちゃんと永久様のペース配分の管理してた?」


 放っとくと門川君は、食事抜き・睡眠抜きなんて当たり前で、仕事をぶっ通し続けてしまう。