「先生…?」
ふと顔を上げると…霧島くんの顔がすぐ近くにあることに今更気が付いて、緊張するわたしがいた。
夢中でケータイの画面を見ていて全然意識していなかったけど、わたしと霧島くんの距離は、ずっと近かったんだ。
「霧島くん、また嘘ついたのね〜」
「嘘じゃないよ。ホントにオレは、安藤先生の方がかわいいって思ってるから」
茶化し気味に言ったわたしに、霧島くんは真面目に返してきた。
その目は、真っすぐにわたしだけを見ていたーーー。
「そ、そう…」
面と向かって言われ、わたしは思わず目をそらした。
「うん」
ちらりと見た霧島くんは笑顔で、ケータイをブレザーのポケットにしまっていた。
「……」
さっきわたしは、霧島くんの彼女の写真を見てしまったのだ。
気まずい思いが、湧きあがる。
顎の辺りでくるんと巻いた栗色の髪の毛と、マツエクかな、目元のメイクが印象的で、顔の横でVサインをしている自撮りっぽいその写真は、すぐにわたしの中に記憶されてしまった。
わたしとは全然違う、今時の女子高生の姿だった。
それなのに、わたしの方がかわいいとか…意味わかんないし。
あんな写真を見た後じゃ、霧島くんと接しづらくなる。
「オレそろそろ帰ろっかな、スケッチブック欲しかっただけだし」
「あ、うん」
わたしは少しだけホッとしながら、霧島くんにスケッチブックを手渡した。
きっと、オドオドしているだろうな、わたし。
「また描いてくるね」
「…っ…⁈」
スケッチブックがわたしの手から離れたタイミングで、その手はあたたかい感触に包まれた。
霧島くんが、わたしの手を握っていたのだった。
そのまま視線を上に向けたわたしは、霧島くんを見つめたまま、目をそらせなかった。
林先生に手を握られた時と全然違う……何が違うと聞かれると言葉では言い表せないのだけど、全てが違うと、握られたこの手が言っているようだった。
ふと顔を上げると…霧島くんの顔がすぐ近くにあることに今更気が付いて、緊張するわたしがいた。
夢中でケータイの画面を見ていて全然意識していなかったけど、わたしと霧島くんの距離は、ずっと近かったんだ。
「霧島くん、また嘘ついたのね〜」
「嘘じゃないよ。ホントにオレは、安藤先生の方がかわいいって思ってるから」
茶化し気味に言ったわたしに、霧島くんは真面目に返してきた。
その目は、真っすぐにわたしだけを見ていたーーー。
「そ、そう…」
面と向かって言われ、わたしは思わず目をそらした。
「うん」
ちらりと見た霧島くんは笑顔で、ケータイをブレザーのポケットにしまっていた。
「……」
さっきわたしは、霧島くんの彼女の写真を見てしまったのだ。
気まずい思いが、湧きあがる。
顎の辺りでくるんと巻いた栗色の髪の毛と、マツエクかな、目元のメイクが印象的で、顔の横でVサインをしている自撮りっぽいその写真は、すぐにわたしの中に記憶されてしまった。
わたしとは全然違う、今時の女子高生の姿だった。
それなのに、わたしの方がかわいいとか…意味わかんないし。
あんな写真を見た後じゃ、霧島くんと接しづらくなる。
「オレそろそろ帰ろっかな、スケッチブック欲しかっただけだし」
「あ、うん」
わたしは少しだけホッとしながら、霧島くんにスケッチブックを手渡した。
きっと、オドオドしているだろうな、わたし。
「また描いてくるね」
「…っ…⁈」
スケッチブックがわたしの手から離れたタイミングで、その手はあたたかい感触に包まれた。
霧島くんが、わたしの手を握っていたのだった。
そのまま視線を上に向けたわたしは、霧島くんを見つめたまま、目をそらせなかった。
林先生に手を握られた時と全然違う……何が違うと聞かれると言葉では言い表せないのだけど、全てが違うと、握られたこの手が言っているようだった。



