布団の中にうずくまって震えている朱鳥。

それに、布団の中からは嗚咽の混じった泣き声も聞こえる。

明け方、仕事前に少し朱鳥の部屋に寄ると、朱鳥が魘されていた。

心配になって、朱鳥を起こすと、今度は布団に潜ってしまった。

朱鳥にお願いして、少しだけ手を出してもらった。

その手を握って、泣いている朱鳥に優しく声をかけ続けた。

朱鳥は、しばらく泣いていたが30分ほどしてやっと落ち着いたらしく、布団から少しだけ顔を覗かせた。

「朱鳥、おはよ。大丈夫?」

そう言うと、朱鳥は涙で真っ赤に腫らした目でコクンと頷いた。

まだ、その目には微かに怯えが浮かんで見えた。

朱鳥の両手を握って、朱鳥に優しく問いかける。

「朱鳥、怖い夢、見たの?」

……コクン

「…そっか。……また、おじさんの夢?」

そう言うと、朱鳥の顔が少し強ばった。

「怖かったんだね……」

そう言うと、今度は悲しそうな顔になってゆっくりコクンと頷いた。

しばらく2人とも黙っていたが、少ししてから朱鳥が怯えた顔で、俺を見つめてきた。

「…………楓摩…」

「ん?」

「……………………抱っこ……」

朱鳥は、少しだけ申し訳なさそうに俺に言った。

きっと、朱鳥はここが無菌室だから、俺が朱鳥を抱きしめてやれない事をわかっているんだと思う。

だけど、きっとそれでも寂しいから、悲しいから、怖いから……俺に抱っこしてほしいと言ってるんだよな…

朱鳥は、しばらくジッと俺を見つめてたが、少ししてから、俺に背を向けた。

……ごめんね

辛い思いさせて

ごめんね

朱鳥のお願いを聞いてあげられなくて

ごめんね

寂しい思いさせちゃって……