夜中、今日は俺も楓摩も夜勤で病院に残っていた。

だけど、楓摩は最近体調が良くないらしく、今日も辛そうにソファで眠っていた。

俺は、病棟のナースステーションでカルテ整理をしていた。

それから、1度医局に行こうとした時、泣き声が聞こえた。

駆けつけると、朱鳥ちゃんが頭を抱えて泣いていた。

俺は、すぐに楓摩に連絡を入れた。

楓摩は、今まで寝ていたのか、疲れたような声だった。

でも、朱鳥ちゃんの為なら行く。と言うのでお願いする事にした。

その後、俺は1度医局に行き、その後またナースステーションで仕事をしていた。

すると、また泣き声がした。

それに、泣き声と言うよりは叫ぶ声。

ナースステーションまで届く大きな声。

周りの看護師たちもざわつきだした。

「すいません、俺、ちょっと様子を見てきます。」

そう言って、ナースステーションを出て声の方へ。

すると、その声はまた朱鳥ちゃんの病室からだった。

でも、朱鳥ちゃんの声だけじゃない……

胸がザワザワと嫌な音を立てた。

「楓摩ー、どうした?」

そう言いながらドアを開ける。

すると……

そこには、耳を塞ぎながら泣き叫ぶ楓摩と、布団から聞こえてくる泣き声。

胸が痛くなるような、悲しい声。

少し、びっくりして戸惑ってしまったけど、我を取り戻して、ドアを閉める。

楓摩が叫んでいる。

こんなに、取り乱した楓摩は初めて見た。

「楓摩、大丈夫か?」

「うあぁっ!!…ハァハァ……ヒック…………あぁぁぁぁぁぁぁぁ」

楓摩は、俺の話も聞こえないくらいに泣き叫んでいて、落ち着かせるのは難しそうだ。

俺は、一旦楓摩をそのままにして、今度は朱鳥ちゃんに声を掛けた。

「朱鳥ちゃん、大丈夫?どうした?」

「ハァハァ…ヒック……グスッ…………ハァハァ…ヒック……」

朱鳥ちゃんは、過呼吸を起こしていて、こっちも話を聞けるような状態では無かった。

そうとうやばい。

そう、判断した俺は、急いでナースコールを押した。

"どうかされましたか?"

「すいません、佐伯です。至急、酸素マスク1個と安定剤2個、それとモニターお願いできますか?あと、橘さんが居たら、この病室に来てもらえますか?」

"はい、わかりました!!"

ナースコールを切り、もう1度朱鳥ちゃんに声を掛ける。

「朱鳥ちゃん、落ち着こう?もう、大丈夫だからね。ゆっくり、深呼吸だよー」

そう言って、背中をさすってあげる。

だけど、なかなか収まらない。

それから3分程してドアが勢いよく開いた。

「佐伯先生!!」

「あ、橘さん。ありがと。ちょっと、それ貸して?」

「はいっ。」

橘さんから、酸素マスクを受け取り朱鳥ちゃんに着ける。

そして、朱鳥ちゃんと楓摩に安定剤を打ってから、次に朱鳥ちゃんにモニターを着ける。

「佐伯先生…これ、どうしたんですか?」

「……俺にもわからない。…だけど、俺が来たらこうなってた。」

「そう…ですか……」

俺は、朱鳥ちゃん優先で呼吸を整える。

楓摩は、安定剤を打つと、しばらくしてから、少し落ち着いて涙を流すだけになった。

「佐伯先生、清水先生どうします?とりあえず、朱鳥ちゃんの隣の病室に寝かせますか?」

「おう、そうだな。んじゃ、楓摩、立て。立てるだろ?」

「……グスッ…………ヒック…」

涙を零しながら、楓摩はノロノロと立ち上がった。

俺は楓摩を支えながら隣の病室に行く。

楓摩は、落ち着きを取り戻して、自分でも状況が理解できたのか、素直にベッドに寝てくれた。

俺は、それを見て、1度また朱鳥ちゃんの病室に戻った。

病室では、橘さんがずっと朱鳥ちゃんを落ち着かせてくれていて、朱鳥ちゃんも大分落ち着いた状態になっていた。

モニターの表示も安定している。

俺は、その様子を見て、また楓摩の病室へ向かった。