朱鳥の治療が始まって4日目。

午前中、朱鳥は喘息の発作が出てしまっていた。

発作を止めてから朱鳥はまた眠りについた。

その後、俺は仕事をしていたのだが、朱鳥は、夢で魘されていたらしい。

さっき、看護師さんから聞いたら、俺が仕事に戻ってからすぐに、眠りながら涙を流していたという。

気になったので、少し早めに夜の回診をする事にした。

朱鳥の病室に入ると朱鳥は布団に潜って眠っていた。

ギューっとイルカの抱き枕を抱きしめながら、何かに怯えるように震えている。

怖い夢でも見てるのかな?

「朱鳥、あーすーかー」

このまま、怖い夢の中に居させるのは可哀想だったので、布団を少し下げ、朱鳥を起こす。

朱鳥は、ゆっくりと目を開けると俺にビックリしたのか、また、布団の中に潜ってしまった。

おかしい。

普段なら、怖い夢を見た後だったら俺に抱きついてくるのに……

何かまた、大人が怖くなるような夢でも見てしまったのだろうか。

「朱鳥ー、どうした?楓摩だよ?怖い夢でも見たの?」

そう言うと、布団の中で微かにビクッとなった事がわかった。

「朱鳥、大丈夫?」

「………………」

「朱鳥、顔出して?」

そう言うと、朱鳥は恐る恐る布団から顔を出した。

朱鳥の顔は真っ赤で、涙目になりながら、こっちを見ていた。

「朱鳥、熱でちゃった?」

コクン

そういう事か…

きっと、この前の注射がだいぶトラウマになっちゃったかな……

朱鳥は、きっと看護師さんが見た後に1度目が覚めたのだろう。

その時、自分でもわかるくらい熱が出ていて、でも俺に言ったらまた痛い事をされるから隠してたって事か。

「朱鳥、少し熱計ってもいい?」

ウウン

朱鳥は、目に涙を貯めながら首を横に振った。

やっぱり、嫌か……

「朱鳥、じゃあ、とりあえずは痛い事しないから体温だけ計って?」

「……痛い事………………しない?」

「うん、しない。でも、熱が高くて危ない状態だったら、解熱剤の注射させて?いい?」

コクン

「じゃあ、熱計るねー」

ピピピピピッ♪

熱はすぐに計ることができた。

39.6

「微妙だなー。本当なら、解熱剤使いたいけど…」

そう言って朱鳥の方を見ると、朱鳥は、今すぐにでも零してしまいそうなほどの涙を目に浮かべていた。

「じゃあ、冷えピタで頑張る?」

コクコク

「うん、わかった。じゃあ、これ以上上がったら解熱剤使うこと約束できるならいいよ。」

「……約束する………………」

「よし、じゃあ、冷えピタ取ってくるね。」

コクン

朱鳥が安心そうな笑を浮かべたのをみて俺は病室を出た。